細胞核の中のDNAの情報が、読み取られ、RNAに写し取られます(転写)。次に、RNAの塩基配列から、タンパク質が、作製されます(翻訳)。このような複製過程を「セントラルドグマ」と呼びます。
DNAの塩基配列は、「A」「T」「C」「G」からなりますが、RNAの塩基配列は、「A」「U」「C」「G」となっており、「T(チミン)」が「U(ウラシル)」になっているので、注意しましょう。
mRNAは、4つの塩基を3つずつ組み合わせて、アミノ酸を指定します。その為、コドンは、全部で、43=64種類あります。標準アミノ酸は、全部で20種類あり、異なるコドンが、同一のアミノ酸を指定することもあります。
RNAポリメラーゼは、104塩基に一つの割合で、間違いを起こしますが、DNAポリメラーゼは、108〜109塩基に一つの割合でしか、間違いが起きません。
マサチューセッツ工科大学のデビッド・ボルティモアの研究チームが、レトロウイルスというRNAウイルスの複製に関する新しい酵素を同定しました。これらの酵素は、ウイルスの内部のRNAを、ヒトの体内で、DNAに変換して、ヒトのDNAに組み込ませることができるのです。これらは、RNA依存性DNAポリメラーゼであり、逆転写酵素と呼ばれます。
ウイルスは、核酸の形状と増殖機構の特徴に基づいて、7つに分類されます。
感染すると、多くの場合、ヒトの細胞核に移動し、ヒトの複製機構を使って増殖します。そして、ヒトのRNAポリメラーゼを使って、mRNAを作って、ウイルス由来のタンパク質を産出します。「アデノウイルス」「パピローマウイルス」「ヘルペスウイルス」「天然痘ウイルス」「EBウイルス」など。
自らのDNAを用いて、DNAを作り、複製できます。「アデノ随伴ウイルス」など。
プラス鎖のRNAが、mRNAとなって、ウイルス由来のタンパク質を作ります。自らの持つRNA依存性RNAポリメラーゼを用いて、複製を行います。「ロタウイルス」など。
RNA本体が、mRNAとして働いて、ウイルス由来のタンパク質を作ります。ヒトの細胞質内で、複製されます。「コロナウイルス」「エンテロウイルス」「風疹ウイルス」「日本脳炎ウイルス」「デング熱ウイルス」「C型肝炎ウイルス」「ノロウイルス」など。
本体のRNAを鋳型に、mRNAを作って、細胞質で、ウイルス由来のタンパク質を作ります。「麻疹ウイルス」「センダイウイルス」「ムンプスウイルス」「RSウイルス」「狂犬病ウイルス」「エボラウイルス」「インフルエンザウイルス」など。
本体のプラス鎖RNAを逆転写して、2本鎖DNAを作って、ヒトのゲノムに組み込みます。そのDNAから、mRNAが作られ、ウイルス由来のタンパク質が産出されます。「ヒトT細胞白血病ウイルス」「ヒト免疫不全ウイルス(HIV)」など。
DNAから、一旦RNAを作り、それを逆転写することで、DNAを作って複製します。「B型肝炎ウイルス」など。
逆転写によって、ウイルス由来のDNAが、ヒトの体内のDNAに組み込まれるということは、そのDNAは、子孫にまで、受け継がれる可能性があるということです。元来、ヒトのDNAには、ウイルス由来のものが多く含まれているようです。新型コロナウイルスは、「1本鎖RNAプラス鎖」ですので、ヒトのDNAに何かしらの痕跡を残す可能性はないのかも知れませんが、その可能性を完全には否定できないのではないでしょうか。そして、それは、子孫にまで、影響を与えます。
コロナウイルスは、「1本鎖RNAプラス鎖」で、新型コロナウイルスも、これの一種です。その他、6種類あって、4種類はただの風邪ですが、2種類は「MERS」と「SARS」で、重症肺炎を引き起こします。